多くの既存企業において選択する行動が似てしまう。競争・競合関係の中で他社の違い見出して、差別化を図ろうとするが、結果的に互いに同質的な戦略に陥ってしまう。そして、それを避けるため他社よりも一歩先をいく、スピードをもって競争優位性を実現しようとする。
この現象は、新規事業への参入や展開においても同じ傾向をみることができる。既存企業とベンチャーと称する企業の違いはどこに存在しているのであろうか。特にその意思決定行動において、これを仮に戦略とするならば、その点から眺めてみる必要がある。
既存企業においてベンチャー企業と比較して、独自性をもった戦略を創り出すことは非常に難しいとされる。他社と全く異なった戦略を採った場合、それには極めて不透明で不確実な意思決定となり、自らがリスクをとることになってしまう。 その為に全く「異なった」差異化戦略よりも、せいぜい「違い」をもった差別化戦略を選択する程度に留まってしまうことになってしまう。だから、よく戦略は差別化戦略だと受取ってしまう。
つまり、「戦略の距離」が近い範囲での選択となる。この戦略の距離は、自社の既存事業との距離でもあり、もう一方は競合他社との距離でもある。
既存企業が、仮に新規事業といっても、それは自社内での新規事業領域であって、他社においては既存事業領域であるかもしれない。 つまり、既存企業の新規な事業は「新奇」事業ではないのである。 結果的に、差異化戦略にもならないことになる。
なぜ、同質的な戦略から飛び出せないのか。その理由はそれぞれにあるものの、基本的にはどの業種・業界も既存のビジネスモデル、市場構造などによってその競争構造が形づけられしまっている。こうした競争構造はそう簡単に変えることは出来そうにない。仮に、構造変革があるとしたら新たな技術革新が突如として出現するか、他の業種・業界からの新たなビジネスモデルによる新規参入である。それは、まさにベンチャー企業であるかも知れない。
こうした現象が起きたならば、そこに新たな競争構造が生み出される。 そうならば、新たな競争環境に適合する戦略を創り出していかなければならない。
しかし現実的には、この戦略はせいぜい追随型戦略の範囲に留まってしまう。従って、短期的に新奇で独自な戦略を創り出し、実現することは非常に難しい。それも、簡単に即座に競合他社の追随を許さない戦略を創り出すことは容易ではないのである。
新たな独自な戦略を創造し自らが変化を起こすことは、そう容易ではない。これこそがイノベーションの本質ではあるが、そこには一体何が必要なのか。少し俯瞰して考える必要がありそうである。