2-5, 企業は自己創造業である

自己創造業になるために
これまで見てきたように、乱気流の最大水準は創造的段階です。創造とはなかなか具体的に表現しずらいものですが、少なくとも、変化を受けてという発想から は出てきません。むしろ変化に先んじることが求められます。加えて、物質的なものはもとより、自らの姿勢や体制をつくりだすという意味で、“自己創造”が 問われています。

クリエイティビティの発揮とは、新たな商機、成長性を見出し、能動的に適応をはかることを意味します。これまで日本企業の多くに見られた傾向は、変化が差 し迫ってから、もしくは影響が顕在化してから、という後追いの姿勢です。もちろん対応しないよりは対応した方がましですが、変化に飲まれるのと、変化の波 に乗ることでは、結果が大きく異なります。自己を創造するという意味合いは、後者のように変化にシンクロすることです。それが今日の企業が成長し、生き 残っていくためのカギに他なりません。

自己創造を進めていくための絶対条件は、確固たるアイデンティティの存在です。アイデンティティの芯が通っているからこそ、積極的な変化に取り組むことが可能になるのです。

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2-4, 環境視点の水準

変化対応の分析には、情報、行動、態度と、3つの視点があります。これらを有意に結びつけることで、変化にどう向き合うべきかが浮き彫りになってきます。 下図のとおり、探求的水準では「チャンスを逃がすな」、創造的水準では「新たな未来を創れ」と、アラートが発せられます。

思考には情報を読みとくリテラシーが欠かせません。全体を見ろとはよく言われますが、むしろ何を“全体”と位置付けるかが難しいものです。直接的な課題として、経済的ないし技術的な要因ばかりに目が向かいがちですが、政治、文化、宗教、民族、歴史、地勢など、 背景にある諸条件が思いのほか大きな影響をもっているものです。

併せて、行動をいかに規定していくかが成否を分けることになります。探求的水準では、「熟知している経験を最大限に生かしそれを新しく組み合わせる」、 変化への機敏な対応と組織的な知の再構成の両立が求められます。新結合とは、単に物理的な集積の問題ではなく、経験と経験、人と人の組み合わせに他なりま せん。情報共有とは使いつくされた表現ですが、より踏み込んだメンバー間の経験共有にこそ、組織力がつよく表れます。

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2-3, 環境の乱気流水準の変化と対応

これまでに経験したことのない環境圧力とはどんなものでしょうか。想像力はもちろん、いざというときの反応力と即応力が問われています。

図表に整理したように、たとえば探求的水準であれば、クロスオーバーファンクションの組織が求められますし、創造的水準にまで至っていれば、アライアンスやM&Aなどの検討も必要となります。

対応可能性の診断では、予測以前の問題として、現状認識の精度が勝敗を分けます。それは環境からのインパクトを脅威と機会に分別することでもあります。現在はすぐに過去に転じてしまいます。次なる一歩のためには、いち早く“きざし”を掴むことが勝敗を分けます。

嗅覚とは動物的な感覚です。危険を察知するのは感度や感性の問題であり、コントロールは難しいかもしれません。しかし、意識して変化に対する洞察性を高める準備を怠っては、生き残りはかないません。

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