7-1, 戦略リテラシー&インテリジェンス・リテラシーの重要性

これまで述べてきた3つの戦略アプローチは個々独立に展開されるものではなく、統合された取り組みに他なりません。その実現にあたっては、新たな組織能力、図表7・1に示す戦略リテラシーインテリジェンスリテラシーが必要となります。

戦略リテラシーは単なる知識でなく、マインドやスタンスをもち、自ら思考する能力と、実現するいく能力が問われるものです。一方、インテリジェンスは情報に端を発する概念であり、目的を実現するための「価値ある情報」と位置付けられます。

経営実践において情報力は生命線です。情報なしに意思決定はできません。「戦略は情報に従う」と言ってもいいでしょう。同時に 実行面では「情報は戦略に従う」ともいえます。情報は目的があってはじめて意味をもつからです。

一般に情報には、データ、インフォメーション、インテリジェンス、3つの階層が存在します。データは、個々の事象、事実などのソースです。インフォメーションは、データを1つのルー ルやフレームワークに基づき目的に即して加工したものです。そしてインテ リジェンスとは、さらに進んで目的と照らし、新たな気づきや発見が付加されたものです。インテリジェンス活動は、意思決定と関連付けられるため、「ストラテジック・インサイト」 (戦略的洞察力)が求められるものでもあります。

インテリジェンスリテラシーでは、洞察力に加え、情報への感度、感性も求められます。新たな時代への気づきとも言い換えられます。知的能力という意味では、戦略およびインテリジェンスにリテラシーが求められるのは必然といえるでしょう。

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6-4, KPIマネジメントの実践

前述のバリュードライバーに対しては、評価基準を設けていかなければなりません。これが「重要業績(成果)評価指標」、キー・パフォーマンス・インディケーター(KPI)です。

KPIを活用して経営活動をモニタニングしマネジメントを進める、基本的に全てのバリュードライバーが業績評価指標とも捉えられます。中でも最も成果に影 響するバリュードライバーを重要業績評価指標KPIと位置付けます。一般的には、バリュードライバー全体をKPIと捉えるケースも多くあります。

KPIマネジメントの実践から、これら指標は成果指標先行指標の2つに大別して捉えられます。成果指標はつまり結果指標で、事後指標、遅行指標にあたります。

マネジメントの本来の姿は、成果に対する先行管理です。先行管理の原則は、行動管理であり、行動は戦略に基づいているかどうかです。ですから行動指標を設定して、進捗のマネジメントを行っていきます。行動評価を絶えず行うことで、 戦略に沿った成果の実現が促されるはずです。

図表6・4で成果指標と先行指標の特徴を表していますが、成果指標は経営目標の達成度スケールと理解できます。全社あるいはビジネス・ユニットのマネジメント・ゴールを示すものです。一方、先行指標は行動としてのプロセス、タスク、業績の良否を判定するスケールであり、オペレーションズ・ゴールを表します。

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6-3, バリュー・ドライバーの展開によるアプローチ

前述のとおり、ストラテジック・パフォーマンス・マネジメント(SPeM)の流れを全体の体系およびプロセス展開として戦略ツリーに落とし込んでいきます。

その際、クリティカル・サクセス・ファクター(CSF)「重要成功要因」を押さえ、これを「バリュー・ドライバー」すなわち価値実現の中心 軸とします。加えて成果、戦略、行動の3つのプロセスの相関に着目します。企業価値の絶えざる追求は、持続的利益成長の実現を意味します。そのための成長 の推進力が重要成功要因であり、バリュードライバーでもあります。

図表6・2のとおり、キャッシュフローの継続性と最大化を目 的とした、企業価値創造の財務的要因を重要成功要因として設定します。財務的重要成功要因は、「ファイナンシャル・ドライバー(FD)」と見なされます。

戦略ツリーにおいて展開される全てのドライバーは重要成功要因を示しています。図表6・3にあるように、ファイナンシャル・ドライバーの次に展開されるのは、戦略的重要成功要因「ストラテジック・ドライバー(SD)」で す。これは財務的要因(経営指標)を実現に向け採るべき戦略であり、端的には戦略課題と表現できるものです。ストラテジック・ポスチャー・プラニングとの 関連で、基本戦略と実行戦略を総じたものと理解してもいいでしょう。この際、戦略ツリーに表現されてくる個々のストラテジック・ドライバーは実行戦略に相 当します。

次の段階でストラテジック・ドライバーに続くのが、業務的重要成功要因「オペレーショナル・ドライバー(OD)」です。

以上、全体のバリュー・ドライバー構成は、FD、SD、ODの3つのドラバーから構成されます。実行局面では、SDおよびODは活動要因とも位置づけられ ます。これは実行に移してはじめて、目的とした財務的要因(経営指標)が実現されるからです。SDとODは重要成功要因であり、活動指標の意味合いもあり ます。

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