4-10, 戦略検証

次に戦略ビジョンをうけて実現への戦略を策定していきます。従来と異なる点は、実行計画で設定した戦略成果目標に基づき、全体を取りまとめ、定量的な経営目標を設定することです。これが戦略に裏づけされた経営目標です。定量的な目標値と、定性的なビジョンとは表裏一体のものです。

戦略内容を決定し実行に移していくのは、図表4・1で示した上昇フロー、戦略検証のプロセスです。これは、採るべき行動と実行から成果への整合性を比較検証するものです。一つには戦略の適合性で、採るべき 戦略が目的にフィットしているかどうか判定します。もう一つは、戦略による具現と効果の有効性で、ヒット性とも言い換えられます。

これらは、ビジョン、戦略、実行計画、成果、が経営目的に沿って一貫しているかどうかで判断されます。当然それは戦略行動と成果の一致を基準とするものです。これが戦略策定における検証の道筋です。検証段階まで含めて、ストラテジック・ポスチャー・プラニングは完結します。

4-9, 戦略策定プロセス

図表4・1のとおり、ビジョン実現のために基本戦略を策定していきます。戦略のタイプは大別して3つに分類されます。

はじめに全社戦略と部分戦略です。全社戦略は企業体ごと、下位が部分戦略です。部門戦略や経営機能別戦略、また事業部別戦略や個々のプロジェクト戦略も部分戦略に該当します。

もう一つの区分は、基本戦略と実行戦略である。これは戦略ビジョンを受け、策定されるものです。ですから決められた枠組みはありませんが、実現可能性を反映していることが最低限求められます。実行戦略は、基本戦略を具現するもので、内実は戦術に近いといっていいでしょう。基本戦略=戦略レベル、 実行戦略=戦術レベルであって、ビジョン実現に向け、何をするかが前者、どのようにするかが後者に相当します。

次に乱気流下で重要な区分は、対外戦略と対内戦略です。こうした区分はこれまであまり検討されず、多くの企業では、自社の経営体質や体制の変革が議論の中心でした。構造変化が非連続的に発生する環境下では、外に目を向けなければ対応しきれません。

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対外戦略は新たな成長戦略や市場戦略、または競争戦略です。対外戦略では「戦略ロジック」が不可欠です。この意味するところは図表4・9に示したとおり、乱気流水準に適合したアプローチへの転換に他なりません。加えて図表4・1で示したとおり、基本戦略は、環境予測と自社能力評価を絡めて策定される必要があります。

実行戦略をロジックとして的確に導き出すには、基本戦略の筋を明確に意識すべきです。実行戦略において、ターゲットとなる成果を財務目標から明らかにする。これによって着地点が明確になります。

ここまでで戦略策定プロセスは一巡します。しかし、現実にはステップ通り進むとは限りません。むしろ試行錯誤から気づき、学びながら進んで行くべきもので す。フィードバックを通じ、策定能力を高め、適応能力を開発していくことが求められます。ゆえに、戦略策定プロセスには組織能力の開発という意味も含まれ ます。こうした連続的な展開こそ活きた組織能力開発の道筋と評価できるでしょう。

H.I.アンゾフはチャンドラーの命題に対して、「戦略は組織に従う」と主張しましたが、戦略経営の本質は、環境と戦略と組織の相互関係の中に確かに見てとることができます。

4-8, 戦略ビジョンの構築

戦略ビジョンでは、経営者の強い意思ないし意志、明確な戦略的意図、実現可能性、新たなSBAに向けた決断等が求められます。

ビジョンの構築は自社の自己変革の表明であり、企業理念を反映したものです。理念に時間軸は含まれませんが、ビジョンには一定時点の具体像 が描写されます。あるべき姿はポジショニングを通じてより明確にされます。例えば市場におけるポジションや競合との関係、あるいは独自性の発揮など、様々 なポジショニングが想定されます。

なぜポジショニングが重要なのでしょうか。それは位置づけに先立つ水準や意図によって、採るべき戦略が異なるからです。 併せて、戦略ビジョンは創発的なもので、環境との共感、共鳴が不可欠です。

有効な戦略ビジョンを構築する、トップは機会あるごとに、その真価を高める使命があります。ビジョンが連鎖反応すれば、組織は自己変革していくものです。組織は使命感と責任感に立脚し、戦略性、柔軟性、開放性、自己成長力を発揮し、主体性を通じ自走力を強化していきます。

戦略ビジョンの妥当性は、企業理念との整合に尽きるといっていいでしょう。ただし、日本企業では、理念が家訓や経営訓、精神と表現されるケースも多々あります。これらは往々にして、自己の存在価値や存在理由があいまいです。理念との違いはここに集約されます。理念とは企業活動の起点であり、同時に到達点でもあります。ゆえにビジョンと理念はつねにシンクロしていることが絶対条件です。