図表4・1のとおり、ビジョン実現のために基本戦略を策定していきます。戦略のタイプは大別して3つに分類されます。
はじめに全社戦略と部分戦略です。全社戦略は企業体ごと、下位が部分戦略です。部門戦略や経営機能別戦略、また事業部別戦略や個々のプロジェクト戦略も部分戦略に該当します。
もう一つの区分は、基本戦略と実行戦略である。これは戦略ビジョンを受け、策定されるものです。ですから決められた枠組みはありませんが、実現可能性を反映していることが最低限求められます。実行戦略は、基本戦略を具現するもので、内実は戦術に近いといっていいでしょう。基本戦略=戦略レベル、 実行戦略=戦術レベルであって、ビジョン実現に向け、何をするかが前者、どのようにするかが後者に相当します。
次に乱気流下で重要な区分は、対外戦略と対内戦略です。こうした区分はこれまであまり検討されず、多くの企業では、自社の経営体質や体制の変革が議論の中心でした。構造変化が非連続的に発生する環境下では、外に目を向けなければ対応しきれません。
対外戦略は新たな成長戦略や市場戦略、または競争戦略です。対外戦略では「戦略ロジック」が不可欠です。この意味するところは図表4・9に示したとおり、乱気流水準に適合したアプローチへの転換に他なりません。加えて図表4・1で示したとおり、基本戦略は、環境予測と自社能力評価を絡めて策定される必要があります。
実行戦略をロジックとして的確に導き出すには、基本戦略の筋を明確に意識すべきです。実行戦略において、ターゲットとなる成果を財務目標から明らかにする。これによって着地点が明確になります。
ここまでで戦略策定プロセスは一巡します。しかし、現実にはステップ通り進むとは限りません。むしろ試行錯誤から気づき、学びながら進んで行くべきもので す。フィードバックを通じ、策定能力を高め、適応能力を開発していくことが求められます。ゆえに、戦略策定プロセスには組織能力の開発という意味も含まれ ます。こうした連続的な展開こそ活きた組織能力開発の道筋と評価できるでしょう。
H.I.アンゾフはチャンドラーの命題に対して、「戦略は組織に従う」と主張しましたが、戦略経営の本質は、環境と戦略と組織の相互関係の中に確かに見てとることができます。