4-1, ストラテジック・ポスチャー・プラニング

ストラテジック・ポスチャー・マネジメントの 実践、「ストラテジック・ポスチャー・プラニング」は、次ページ図表の体系として整理されます。従来の中長期の戦略計画との本質的な違いは、“ポスチャー”の表現が示すように、将来の自社像にあります。

将来の環境に自社を投影する、これが戦略ビジョンです。戦略ビジョンを構築するなかで、自社像が明確化され、“戦略的意図”が顕在化してきます。ビジョンとは使い古された表現ですが、特に「戦略ビジョン」と強調することに意味があります。ここでは“戦略に裏付けされた経営目標”に則り、実行計画まで導かれます。

このように、戦略の策定と実行、成果は一連のものです。その一貫した流れがポスチャー・マネジメントです。

3-5, 3つの戦略的アプローチの統合と求められる2つ組織能力

乱気流への適応では、3-2で述べたとおり、3つの戦略的対応が必要です。

1つ目は「ストラテジック・ポスチャー・マネメント(SPM)」 です。自社の将来のあるべき姿、全体像を明らかにし、「事業」「組織」「財務」「社会」の 各領域を具象化していきます。これが「戦略ビジョン」の構築にあたります。変化に対する自社の「戦略的意図」と言い換えてもいいでしょう。ビジョンの構築 が、新たな事業領域の設定につながります。

2番目は「ストラテジック・イシュー・マネジメント(SIM)」です。課題には「機会」や「強み」といったプラス面と、「脅威」や「弱み」と見なされるマイナス面が併存します。環境からのシグナルを見定め、プラス面を効果的に引き出すことこそ、企業経営のダイナミズムに他なりません。

3番目は「ストラテジック・パフォーマンス・マメジメント(SPeM)」です。上記2つで適応を図りつつ、目標である成果を実現し、企業価値の向上につなげることが問われます。ここでは、個々の戦略と企業経済価値を結 びつける「バリュードライバー」を通じ、これをKPI(Key Performance Indicator)に落とし込むことが基本になります。

SPMとSIM、そしてSPeM、三位一体の実践は、単なる知識やスキルではなく、環境と連動したリテラシーです。これを「戦略リテラシー」といってもいいでしょう。戦略を策定し、実行する上で、戦略的意思決定を行う前提にこのリテラシーが位置づけられます。

加えて、戦略的意思決定の基盤となるのが判断に先立つ情報です。単なるインフォメーションではなく、“戦略情報”と位置づけるべきものです。戦略情報を整え、成果につなげる素養がインテリジェンスリテラシーと言えるでしょう。

3-4, 2つのタイプの環境と採るべき戦略視点

戦略的セグメンテーションを通じて、新たな戦略的事業領域(SBA)に自社を位置づけ直すこと、高い乱気流水準では、SBAの非連続性を意識し、事業領域を定義し直す必要に迫られます。

図表のとおり、“現状延長型の環境”では既定の路線を維持していけば事足ります。加えて、成功しているロールモデルを焼き直すことも比較的容易です。 模倣戦略は安定した環境条件下で効果を発揮するケースが多く見受けられます。

一方、“乱気流型の環境”では、ドラスティックな戦略の転換が求められます。事業領域の見直しはそのための試金石です。事業領域が戦略を方向づけるといってもいいでしょう。新たなSBAを規定することで、自ずと自社が採るべき戦略が明確に意識されるともいえます。

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