3-3, 戦略的マイオピア

マイオピアとは近視眼的ということです。近視眼では企業経営は立ち行きません。これを意識的に脱することが“戦略的マイオピア”です。ここで大切なことは、表面的な状況に左右されることなく、本質を見据える意識です。

脱-近視眼という意味では、自社都合の考え方をいったん脇に置き、環境の側からものごとを見つめ直すことがカギになります。「自社の成功をいかに最大化す るか」という従来型のマーケティング発想から、「どんなビジネスに関わるべきか」という自社を外側から見つめる視点への移行です。

戦略的マイオピアとは、環境の側に立ったアプローチを基本とします。これが戦略的セグメンテーション、後述の戦略的事業領域 SBA(Strategic Business Area)という理解に繋がっていきます。新たな成長機会を捉えることと、SBAを見定めることはイコールであって、いずれも外部目線を注視するものです。

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3-2, 2つの戦略的な対応

自己創造に向けた道筋は、大きく二つあります。一つは、将来の環境にどう適応するかということ、もう一つは想定外の事象にどう乗り越えるかということです。

一つ目は「自社を環境の中に位置づける対応」です。自社を環境内存在として、その姿(ポスチャー)を明示すること、これがストラテジック・ポスチャー・マメジメント(SPM)です。自社の戦略計画を明確にうち立てることとも言い換えられます。

二つ目は、リアルタイムに適応する、「戦略的重点課題の経営」です。これをストラテジック・イシュー・マメジメント(SIM)と呼びます。

これらを組み合わせることで、戦略による経営活動が日常業務活動として展開できるようになります。併せてその推進には、後述の成果を生み出す企業価値の向上、ストラテジック・パフォーマンス・マネジメント(SPeM)が必要になります。
これらの対応には、前提となる「戦略的マイオピア」と、環境の側から見る「成功戦略」がカギを握ります。

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3-1, 環境適応と戦略による経営対応

これまでの強みに依存してばかりでは、これからの成長はおぼつきません。
図表のとおり、日常業務に加えて、戦略による経営活動が必須ですが、実態は、この二つが遊離し、かえって環境との不適合が増大しています。

一時期、現場力が着目され、トップ・マネジメントによる現場での直接指揮が奨励されました。しかし、職能分担を考えれば、そう単純な問題でないことは明ら かです。乱気流環境への適応では、戦略による経営活動と日常業務による経営活動を連動させることが必要です。あたり前のことですが、日常業務活動は戦略が 具象化したものであって、一つ一つの活動に戦略意図が反映されているはずです。

ありがちな過ちとして、戦略を欠いたまま、現象面だけを模倣して競合に追随するといったケースが散見されます。図示したとおり、これら二つの関係は足し算ではなく掛け算です。いずれかが0であれば、企業経営は機能しません。 “悪貨は良貨を駆逐する”と言われますが、日常業務に囚われ過ぎれば、企業経営の根幹が揺るがされることになります。

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