ボストン・コンサルティング・グループが、新たな戦略フレームワークを紹介した。この内容は、書籍「戦略にこそ『戦略』が必要だー正しいアプローチを選び、実行する」(2016.2.15)にその基本的な考え方を示している。この戦略アプローチは著書の一人でもあるマーティン・リーブス氏が2011年のHBRに「適応力戦略」アダブティブ(適応型)戦略として発表したものが基本となりそれとほぼ同様な捉え方である。
マーティン・リーブスの適応力(Adaptability)の戦略は、「予測しがたい事業環境変化に迅速に対応することを「競争力」の源泉とする戦略である。」としていた。今日のように不確実でリスクの高い時代には、一時的な組織能力だけでは持続的な成長は約束されない。持続的競争優位は、迅速な適応能力(Adaptability)を育てる「2次的な組織能力」からもたらされる、としている。
それは、① 素早く変化のシグナルを読み取って対応する ② 自社が提供する製品、サービスやビジネスモデルについて実験を繰り返す ③ 複数のステークホルダーが関わる複雑なシステムを管理する ④ 人材の力を引き出す、ことが重要あるとしている。
さらに、アダプティブ戦略に必要な「2次的な組織能力」は「実験能力」であるとして、「失敗への対応」に対する態度が重要で、試行錯誤には必ず失敗が伴う、失敗を受容し、そこから学ぶ能力がなければ、試行錯誤ではなく、たんなる錯誤になると強調している。
この戦略のフレームワークは、環境の予測可能性と企業行動の環境への影響力、すなわちその環境は制御可能か否かによって5つの戦略タイプから選択し、あるいはそれらの組合せていくことであるとしている。前提となるこの事業環境変化を5つ分類して、当時はこのように示していた。
①環境があまりにも過酷なら「サバイバル戦略」、②環境が予測可能でも支配できないなら「クラシカル戦略」、③環境が予測可能で支配できるなら「ビジョナリー戦略」、④環境が予測困難でも支配できるなら「シェイピング戦略」⑤環境が予測困難で支配もできないなら「アダプティブ戦略」であるとしていた。現在はその後の実証研究を通じて一部の戦略タイプに表現を変更している。これらは、基本的な考え方や捉え方には変わりはない。
この、新たな戦略アプローチとして戦略タイプに分類において、環境予測可能性と、支配可能性(企業行動の環境への影響力)という評価軸をもったところにその特徴があるといえる。
さて、ここで再考しなければならないのは、これまでの戦略研究と同じように「採るべき戦略」を戦略タイプに類型したアプローチから選択的に決定していっていいのか、というところに帰着してしまう。マーティン・リーブス氏が2011年にHBRにおいて発表した「適応力戦略」アダブティブ(適応型)戦略に起点に立ち返り、環境適応のあり方を再度考えていく必要がありそうである。そして、自社(自己)のおいて捉えるべき「戦略の本質」を明らかにしそれを突き詰めることにある。